あとちのようなもの

気ままに世の中のこと

司書1年生のための図書館を概観する本

図書館に関する専門図書は多数あれど、とりあえず1冊でざっくり理解するのに、おすすめの本。

 

新しい時代の図書館情報学 (有斐閣アルマ)

新しい時代の図書館情報学 (有斐閣アルマ)

 

 

図書館がどのような役目を持って組織されており、また、それらはどのような歴史的経緯、専門的技術によって成り立っているかを、一通り説明している。

本来であれば、それらは各項目で1冊の本となっている(しかも、類書が何冊もある)。したがって、深く知ろうとすれば物足りないかもしれない。そんなときのために、それぞれの項目に、参考文献が示されており、それをしるべに読み進めていけば、さらに理解が深まる。

 

掲載されているのは、

第1章 図書館の意義と役割

第2章 図書館の歴史

第3章 図書館の機能と種類

第4章 図書館のサービス

第5章 図書館のコレクション

第6章 図書館の情報組織化

第7章 図書館のネットワーク

第8章 電子書籍時代の図書館

第9章 図書館利用教育と情報リテラシー

第10章 図書館経営

第11章 図書館員になるということ

第12章 知的自由と図書館の自由

となっている。

 

図書館司書を目指す人や、図書館員だけどもう1度知識を見直したい人、また、利用者でも図書館を理解したい人におすすめしたい。

 

理論面はこれ1冊で概観できるが、実践を知りたいという人におすすめを挙げておく。

未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)

未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)

 

 

これからの図書館像(実践事例集):文部科学省

 

つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)

つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)

 

 

【読書メモ】大澤正雄著/図書館づくり繁盛記

 

 ここのところ、図書館の新築やリニューアルで、よく問題が起きています。

だいたいは、民間委託をどのように行っていくかといったところや、予算などの問題。

反対運動や検証、住民投票などが行われています。

そのあたりのことは、別に検証する(かもしれない)として。

 

この本は、著者の大澤正雄氏が関わってきた図書館づくりの個人ヒストリー。練馬区(東京都)、朝霞市(埼玉県)、鶴ヶ島市(埼玉県)で、図書館をつくってきた経験を記しています。

 

ここ最近のホットトピックで、図書館がどのように作られているか、といったところに興味が出てきた人もいるでしょう。そんな人にこの本は、1個人の経験とはいえ、複数の図書館がどのようにできあがってきたかを伝えています。

 

この本から読み取れるのは、図書館をつくるにあたって、何を考え、どのような問題があり、どのように作ってきたか、ということ。1960年代の図書館づくりからなので、最近の図書館がどのように展開してきたか、という歴史も垣間見られます。歴史の実例は、最初に挙げられている練馬区立の図書館で垣間見られます。今では、図書館では自由に本を手にとってみられるけど、すべての本が閉架が基本だった時代があるって、信じられますか? 開架にすることに図書館員が反対していたって信じられますか? NDCじゃ使いづらいから独自に分類を!とか60年代、70年代から言われているんですよ。公共図書館は、そんな時代を経て、今、サービスを行っているんです。

そんな歴史的変遷も読み取れます。

 

ただ、この本は、あくまで個人の主観に基づくものです。

運動や実践が、どのような評価をもたらしたのかは、別の視点からの検証が必要です。

こんなことを考え、実践して、図書館を作ってきた図書館員がいた、という感じで読んだほうがいいです。

 

まぁ、それでも、図書館づくりには、これまでもいろんな問題や、考え方の変更などがあった、それはこれからも変わっていくだろう、ということの考える土台にはうってつけだと思います。

 

一図書館員の回顧録なので、合わせて読んでほしい本があります。

図書館運動は何を残したか―図書館員の専門性

図書館運動は何を残したか―図書館員の専門性

 

 

市民の図書館

市民の図書館

 

 

 

図書館の街・浦安―新任館長奮戦記

図書館の街・浦安―新任館長奮戦記

 

 このあたりを読むと、公共図書館の最近の発展の歴史がわかります(さらに前史がありますが)。

選書についての雑感

武雄市の選書リストに引き続き、今度は海老名市の選書について。

 

武雄市のリストは、見てみたはいいけど、見た時にざっとの感想で、定価ベースでも金額が合わないなぁとは思っていたんだけど、まさか、中古価格で買っていたとはさすがに思いもよらず。

ちなみに、公表された当時、約1900万円で約1万冊、ということで、定価なら平均単価約2000円なはずなのだけど、約700万円だったという話がでてきましたねぇ。

この話はまたのちほど。

 

さて、海老名市のほうです。

10月1日にリニューアル開館する予定で、新たに所蔵する資料がぞくぞくと購入されているはずですが。

ここで、問題化されました。

 

海老名市立ツタヤ図書館、驚愕の実態 - ナムラーのブログ - Yahoo!ブログ

眼鏡ふき・おろし金・シリコン鍋……武雄市に続き来月新装開館予定の海老名市立中央図書館でも「疑惑の選書」が発覚か | ガジェット通信

海老名市立図書館、選書やり直しへ 武雄市図書館問題が「飛び火」

 

購入予算約2100万円、購入冊数約8300冊で、平均単価約2500円。

その内訳では、工学・工業分野(おそらくNDC5分類)が6500冊で、そのなかでも料理の本が約4000冊との話。

 

さて、別に、賛成でも反対でもありません。

例によって、図書館の選書のセオリーや、ほかの図書館でならどう考えるか、という視点で見ていたいと思います。

 

まず、平均単価2500円について。

経験値というか、大体のところ、一般的な公共図書館だと、年間の資料購入では平均単価は1500円から1700円といったところです。レファレンスに力を入れ、なおかつその割には若干予算低めのところで、2000円を超えるところもあります。

逆に、近年では、資料費の低下により、基本的な資料を押さえつつも、利用者の満足度を下げないために冊数を確保するという判断をした結果、平均単価の低下がみられます。それぞれの資料がよくないというわけではないのですが、文庫や新書、また低価格の入門書などが購入の中心になってくるからです。

ちょっと内容レベルの高い本は、価格も高いのです。

そう考えると、2500円というのは、遡及選書では、所蔵したくても予算の関係で手を出せなかった資料を、これを機会にバンバン買えた、という夢のような話です。うらやましい。

が、今回の海老名では、そういう話じゃないんですよね、たぶん。

ちなみに、さきの武雄市の選書リストでは、ざっと見た感想ベースで平均単価1200円から1400円くらいかな?と思っていたのですが、きちんと資料を特定して定価を調べた方によると1400円くらいらしいですね。はて、定価ベースで500万円ほど計算が合いませんがどういうことでしょうか、と思っていたら、実際には中古で買ったので700万円でしたという話が出たので、1900万円との差額はどこへ消えたのかという疑問が残ります。装備代やMARC代も資料費に入れていいのであれば、本代1500万円でも総額1900万円はあり得るのですが。700万円だとどう頑張っても1900万円の理由が見つからぬ。

 

次、料理の本、4000冊について。

出版年鑑とか見ればわかりますが、料理の本って出版点数が多いので、買おうと思えばいくらでも買えるジャンルです。

で、さきの平均単価2500円と合わせると。

一般向けの料理本はというのは、いくらでも出ててもそんなに高くはなく、内容も似通っているので、いっぱい買うと同じような本ばかりになってしまいます。ところが、プロユースの専門的な料理本は、これまた単価が高し。なので、たとえば、食に関するビジネス支援に重点を置いて選書します、ということになると、平均単価2500円は理解できる金額となります。

が、これも海老名ではそういう話じゃないんだろうなぁ。。。

 

4000冊が多いかというと、これは悩ましい。

今回の購入資料のなかでは、たしかに突出しています。既存の所蔵資料も合わせることを考えると、多いような気がします。

ただ、蔵書の全体のなかでのバランスでもあり、重点分野であれば多めということもあるので、合わせて見てみないと、多い少ないの評価はできないと思います。

 

次。議会で話題になったという、本の内容。

タジン鍋だのは、さきのガジェット通信が検証してたISBNを付けられて書籍扱いになっているレシピ付き鍋で、たぶん、その通りではないかと。

で、これをどう考えるかと。

日本の図書館でも、本以外を貸出している図書館はあります。

たとえば、米粉のベーカリーマシンや塩分量計、おもちゃなど。どこがやってると書くと、それこそ、図書館でそんなものを貸すのはいかがなものか、と飛び火しそうなので書かないですが、ちょっとググればどこがというのはわかると思います。

あと、結構多いのが複製絵画の貸出し。武雄のお隣の伊万里市でもやってますね。

海外だと、クッキー型を貸出しているところも。

それぞれ、なぜそれらを貸出すのか、というのは、それぞれの図書館が考えて行っています。

海老名でもそのようなサービス展開を考えて、選ばれているのならいいのですが、おそらくそういうことではないのでしょうね。。。

とはいえ、そういうサービス展開を考えていたとしても、自分なら違う本を選んでいただろうなぁとは思います。タジン鍋のレシピ集など、レシピがおまけの本付き鍋じゃなくて、もっと内容の充実したものがありますから。鍋だって付録につけられる程度で、繰り返し不特定多数が使用するには強度に不安のあるものではなく、プロの使用に耐えるものを購入して、市民がお試しで使えるようにすれば、そこから新たなライフスタイルの提案になるのではないでしょうか。

 

また、議会で直接書名の挙がった、タトゥーの本。

いかがなものか、という話でしたが、決めつけるのはよくないなぁ。

というのも、このテーマの本の出版点数や、文化・風俗的な価値なんかを考えると、第一印象では、私が選書しても選書候補には残ります。むしろ予算があるのであれば置きたい、テーマ的には。次の段階で、タトゥーの本であればほかにもないのか、ほかにあるとしたらどちらのほうがより情報提供が行えるのか、といったことを考えます。類書がない場合、この本を入れるかどうかを、内容や作りから考えます。

若い女性の流行のチャラいタトゥーなどふさわしくない、とかいう視点でのよしあしは判断基準ではありません。というか、この発想だと、最近問題になった『絶歌』を入れる入れないという話と、根っこは一緒です。

とはいえ、この本がいかがなものかと話題に上ったという事実だけが伝えられており、なぜふさわしくないかの説明がないので、なんとも言い難いですが。

が、説明なしにふさわしくないと言っているのと、説明なしにふさわしいと言っているのは、実は同じことです。

1冊1冊、なぜそれを選んだのか、なぜそれを選ばなかったのか、を市民に説明できるようちゃんと理由を持って選書しろって、習ったなぁ(遠い目)。

 

心配なのは、教育長がチェックします、と言っていること。

もちろん、税金を使って町の財産になっていくのですから、しかるべきチェック機能は必要です。

ただ、内容や作り(実際、流行に便乗して低予算でやっつけでつくられた中身の薄い本もあります)からではなく、特定の分野について、偏見でふさわしくないと判断される危惧はあります。

公共図書館は広く情報ニーズに応えるという使命があります。いわゆる良書を提供する、ということではありません。

だから、チェックといっても、ふさわしいかどうかではなく、1冊1冊なぜそれが選ばれたのか説明して、納得を得る、というのが重要なのではないでしょうか。

 

 

 

【資料紹介】ちょっとの時間で魅力up!!本棚のディスプレイ(さわださちこ・全国学校図書館協議会)

『ちょっとの時間で魅力up!!本棚のディスプレイ』(さわださちこ・全国学図書館協議会

 

ちょっとの時間で魅力Up!!本棚のディスプレイ

ちょっとの時間で魅力Up!!本棚のディスプレイ

 

 

さわださちこさんによる、学校図書館のディスプレイ本、3冊目。

今作では、個々の学校のニーズに合わせて、before/afterの事例をもとに、展示のやり方を紹介。

メインのターゲットは学校図書館だけあって、子どもが楽しくなりそうな飾り付けが多い。大人向けの本棚をつくるときは、そのまま参考にすることはできないが、空間の作り方など、立体的に本を展示する発想は非常に参考になる。

 

これまでに出版された展示の本はこちら

楽しもう!学校図書館ディスプレイ

楽しもう!学校図書館ディスプレイ

 
すてきに本のディスプレイ

すてきに本のディスプレイ

 

 

【イベント情報:神奈川県横浜市 2015/8/22】JPIC読みきかせサポーター講習会(横浜会場)

JPIC読みきかせサポーター講習会(横浜会場)

 

【山口マオ】
イラストレーター、絵本作家。東京造形大学絵画科卒業。イラストレーションの世界で活躍、絵本の代表作に「わにわに」シリーズがある。その他の作品に『かにのしょうばい』、『なんでもやのブラリ』、『オオカミがやってきた』など多数。最新刊は『グッバイ山でこんにちは』。

■日程:8月22日(土)10:15~16:00
■会場:横浜市・AP横浜駅西口(横浜市西区北幸2-6-1 横浜APビル4F)
■プログラム
午前 絵本作家・山口マオさんによる特別講演
午後の講義①「読みきかせのポイント~初心者から経験者まで」
午後の講義②「読みきかせの楽しさ広げよう」
情報提供「子どもたちに本を届ける ~JPICの場合~」
■参加費 1,000円(税込) ※当日会場にて承ります

 

◆申込締め切り:先着順

お申し込みフォームと開催概要の詳細はJPICホームページ をご覧ください。
http://www.jpic.or.jp/learn/support/

【イベント情報:秋田県秋田市 2015/11/5・6】第37回東北地区学校図書館研究大会(秋田大会)

第37回東北地区学校図書館研究大会(秋田大会)

 

・大会主題

 心をひらき 未来をひらく 学校図書館の創造

 

・期日

 2015年11月5日(木)~6日(金)

 

・会場
 【1日目・部会】 秋田市立勝平小学校/秋田市立勝平中学校/秋田県立秋田明徳館高等学校
【2日目・全体会】 秋田県児童会館

 

・主催

東北地区学校図書館連絡協議会/(公社)全国学図書館協議会秋田県学校図書館協議会/秋田県高等学校教育研究会学校図書館部会

 

・後援

文部科学省秋田県教育委員会秋田市教育委員会秋田県市町村教育委員会連合会/秋田県小学校長会/秋田県中学校長会/秋田県高等学校長協会/秋田県私 立学校中学・高等学校協会/秋田市小学校長会/秋田市中学校長会/秋田県教育研究会/秋田市教育研究会/秋田県高等学校教育研究会/公益財団法人日本教育 公務員弘済会秋田支部

 

・参加費

 4,500円

 

・詳細・申し込み

http://www.j-sla.or.jp/seminar/37touhoku.html

【イベント情報:石川県白山市・野々市市 2015/11/19・20】第28回北信越地区学校図書館研究大会(白山・野々市大会)

第28回北信越地区学校図書館研究大会(白山・野々市大会)

 

・大会主題

主体的な読書活動を支え 確かな学力を育む学校図書館の創造

 

・期日

平成27年11月19日(木)~20日(金)

 

・会場

石川県白山市野々市市
全体会・記念講演:白山市松任学習センター
分科会:市民工房うるわし
<研究授業>白山市立松陽小学校、白山市立美川中学校、石川県立野々市明倫高等学校

 

・主催

北信越地区学校図書館協議会/公益社団法人国学図書館協議会/ 石川県学校図書館協議会

 

・後援

文部科学省/石川県教育委員会白山市教育委員会野々市市教育委員会/長野県図書館協会小中学校図書館部会/長野県高等学校図書館協議会/新潟県学校図書館協議会/富山県学校図書館協議会

 

・参加費

3,000円

 

・詳細・申し込み

http://www.j-sla.or.jp/seminar/28hokushinetsu.html